高知新聞連載シリーズ 「塀の中から」

高知新聞連載(2017年3月30日)

「塀の中からー高知刑務所・更生の道」

5⃣ 出所  山崎友裕記者のレポート

 (最終回)

 

 高知刑務所を出所した男性(66歳)が県内の配送アルバイトに励んでいた。「やっぱり『職』と『人』が本当に大切。どちらか欠けるとまた罪を繰り返してしまうから。」。男性はしみじみと話した。親族や知人など身寄りがない満期釈放者の93%が5年以内に再犯を犯している。各刑務所は全国の地域生活定着支援センターなどと連携し、出所後の生活支援に力を入れる。

 

 高知市内で10年以上保護司を務める男性は「1回失敗しても終わりじゃないという土壌づくりが大事」。また「出所者を警戒するのは分かるけど、みんなで受け入れていく方がより良い社会につながるはず」と保護司は経験を元にきっぱりと言う。

 出所後社会に定着するには、本人や刑務官、保護司らの努力だけでは限界がある。

 「社会全体で彼らの再出発を支えること」と訴える。


高知新聞連載(2017年3月29日)

「塀の中からー高知刑務所・更生の道」

4⃣ 矯正  山崎友裕記者のレポート

 

 高知刑務所内の教室で車座になった職員と外部講師と4人の受刑者が意見を出し合う。「薬物依存離脱指導」のプログラムは週1回60分の講義を3か月間行われる。

「監獄法」から「形而収容施設法」へと一新された大きな変化の一つが、この「教育プログラム」と「就労支援」である。

 

 刑務所に再入所した受刑者のうち、およそ7割が犯行時無職であった(2016年版「犯罪白書」)。就労支援は面接から出所後の就職意向調査、パソコン操作研修などきめ細かい支援を行う。

 

①「改善指導」②「就職訓練・就労支援」③「福祉的支援」これが再犯防止の三本柱


高知新聞連載(2017年3月28日)

「塀の中からー高知刑務所・更生の道」

3⃣ 刑務官  山崎友裕記者のレポート

 

 

 受刑者の指導、監督に当たるのが刑務官。高知刑務所には130人の刑務官が勤務している。

 

 2001年名古屋刑務所の刑務官による受刑者集団暴行事件が発生。事件を契機に監獄法が約百年ぶりに「受刑者処遇法」に一新した(後に刑事収容施設・被収容者処遇法に改称)。刑務所は「処罰より教育」へと大きく重心を移した。

 受刑者教育は主に「教育専門官」と呼ばれる専任職員が担当するが「受刑者に一番密着している刑務官のスキルアップがいい。再犯防止・改善指導には職員のマンパワーが要る」という。


高知新聞連載(2017年3月27日)

「塀の中からー高知刑務所・更生の道」

2⃣ 受刑者  山崎友裕記者のレポート

 

 

 2016年版犯罪白書によると、15年に摘発された人の再犯者率は48%。仕事や身寄りのない高齢者の立ち直りは難しく、刑務所を出て5年以内に再び罪を犯した高齢者のうち、4割はわずか半年未満で再犯に至っていた。

 

 「したらあかんって思いはあったけど・・。一回盗んだら1日生きられた。」と語る9度目の服役中の男性は95歳。近所のスーパーで弁当を一つ「生きるために盗まにゃいかんかった。」。

 塀の外に出ても生活は苦しい。それと比べれば、三食付きの刑務所の居心地はさほど悪くない。


高知新聞連載(2017年3月26日)

「塀の中からー高知刑務所・更生の道」

1⃣ 規律  山崎友裕記者のレポート

 

 

 358人の受刑者を収容する高知刑務所。

 午前6時40分「きしょおーっ」の声が静寂を突き破り、午後9時の消灯まで、塀の中は黙々と「規律」を守ることが、平坦ではない更正への道しるべとなっている。

 

 国内62カ所の刑務所は受刑者の刑期や犯罪歴などで分類され、高知刑務所は犯罪的傾向の進んだ「B指標」、刑期10年未満で2回以上罪を犯した累犯者たちだ。

 

 高知刑務所の平均入所回数は5.1回。高齢者を中心に服役10回以上が12.4%を占める。