保護司の辞典

この「保護司の辞典」は

当ホームページの編集子が

高幡保護区保護司会の保護司さんのために

活動の中で必要となった用語をその都度まとめたものです

公式な用語の定義ではありませんので取り扱いの注意をお願いします

(20170923胡)


あ行

愛着障害(あいちゃくしょうがい) 

 愛着障害とは、子どもの基本的な情緒的欲求や身体的欲求の持続的無視、不安定な対応などで愛着形成が阻害されて起こる。子どもがどんなに愛着行動を示しても、無視され安定しない関係の中では、愛着関係は形成されない。

 その背景には、深刻な児童虐待・ネグレクトを含む不適切な関り(マルトリートメント)が考えられる。

 愛着障害の1つのタイプに「反応性愛着障害」がある。幼い頃、親との間で愛情のキャッチボールをしてこなかったせいで、他人全般を信用できなくなり、強い警戒心とともにあまのじゃく的な言動をしてしまうのが大きな特徴。

 2つ目のタイプが「脱抑制型対人交流障害」。他人に対する愛着はあるものの、特定の相手に対して愛着を示す能力が欠如し、また誰彼かまわず愛着を求め愛情をふりまいたりもする。一見社交的に思われるが、他人に対し無警戒で相手をよく吟味しない傾向がある。

 

1号観察(いちごうかんさつ) 

 家庭裁判所の決定により保護観察に付された者に対する保護観察(更生保護法第48条

第1号,旧法第33条第1項第1号)。

 


か行

企画調整保護司(きかくちょうせいほごし) 

 全国に501か所に設置されている「更生保護サポートセンター(以下「サポセン」)」に常駐しその運営に従事する保護司で、保護観察所長から委嘱された者をいう。従事した企画調整保護司には特殊事務処理費として実費弁償金が支給される。

 企画調整保護司は①保護司の行う処遇活動への支援②地域支援ネットワークの構築③地域に根ざした犯罪・非行防止活動の推進④地域への更生保護活動に関する情報提供等を行う。

 高知県内15保護区のうち、12保護区に企画調整保護司が配置されサポセンの運営にあたっている。「更生保護サポートセンター高幡」には17名の企画調整保護司が委嘱され、概ね月1回の頻度で駐在している。当サポセン高幡は、月末には企画調整会議が開催されセンター長を中心に、サポセンの運営等について協議を実施。また毎月10、20日の開所日(閉所日は直近の開所日)には、高幡保護区の会長と事務局長がサポセンに出務し保護区の事務等に従事している。 

 

矯正施設(きょうせいしせつ)

 犯罪を行った者や非行のある少年を収容し、改善更生のための処遇を行う施設。

 教義では、法務省所管の刑事施設である刑務所・少年刑務所・拘置所の3施設と  少年院・少年鑑別所・婦人補導院の併せて5施設をいう。刑務所を細分して医療刑務所、社会復帰促進センター、交通刑務所、女子刑務所と呼ぶことがある。

 広義では、上記の法務省所管の施設のほか、児童自立支援施設(厚生労働省・都道府県の所管。児童福祉法上の施設)などを含んでいう場合もある。

 刑事施設の被収容者は平成27年末で、58,497人。うち受刑者51,175人、死刑確定者126人、未決拘禁者6,462人、その他734人。   →平成28年版犯罪白書

▼ 刑務所は、懲役、禁錮又は拘留に処せられた者を拘置する刑事施設。死刑確定者は改善更生のための処遇が必要ないことから拘置所に収容される。近くでは高知刑務所

▼ 拘置所は、未決拘禁者(被疑者・被告人)と死刑確定者が収容される。

▼ 少年院は、家庭裁判所から保護処分として送致された14歳以上20歳未満の者、または有罪判決を受けた14歳以上16歳未満の者を収容し、矯正教育を授ける施設。初等少年院、中等少年院、特別少年院及び医療少年院の4種がある。

▼ 少年鑑別所は、家庭裁判所の調査及び少年審判を行うために観護の措置の必要がある少年を収容し、その資質の鑑別を行う。少年院とは違い、主に、面接・心理テスト・意図的行動観察などにより少年を鑑別(分析)するための施設。

▼ 婦人補導院は、売春防止法により補導処分を受けた売春婦を収容し、更生のための補導を行う施設。

 

更生保護委員会(こうせいほごいいんかい)

 犯罪者予防更生法に基づき全国8ヵ所の高等裁判所の所在地に設置され、その管轄地域内の刑務所受刑者の仮出獄、仮出場の許可および取消し、不定期刑の受刑者の刑期の終了決定、仮退院、退院の許可、被害者等の意見等の聴取、保護観察所の事務の監督などの権限を有する合議制の決定機関で、法務省設置法に基づく地方支分部局(矯正管区、地方更生保護委員会、法務局、地方入国管理局、保護観察所)のひとつ。

 地方委員会は3人以上14人以下の委員と事務局で構成され、委員は保護観察所長、法務省OBが中心だが、近年は教員や会社役員など民間出身者が増えてきた。

 四国地方更生保護委員会(職員数23人)は高松市に所在する。

 

更生保護サポートセンター(こうせいほごさぽーとせんたー)

 個々の保護司の処遇活動を支援する必要性や,保護司会がより組織的に処遇活動や犯罪予防活動を行う観点から、更生保護サポートセンターが平成20年度から置かれている(22年度までの名称は、更生保護活動サポートセンター)。平成28年3月31日現在、全国に446か所設置され、27年度の利用回数は5万1,146回であった。

 高幡保護区保護司会は、平成27年12月1日、法務省の指定を受けて、高知県下では8か所目となる「更生保護サポートセンター高幡」を開設した。当初は四万十町役場東庁舎、現在は農村環境改善センターに所在している。

 18人の企画調整保護司の当番制により運営し、毎月月末には企画調整会議を開催し運営課題、当番者の日程調整等を行っている。また、サポートセンターは高幡保護区の事務局拠点として役割を発揮しており、会長・事務局長は10日・20日(サポセン閉館日は直近の開館日)には必ず出務し、所管の担当理事も集まって事業活動の準備・まとめ等の事務にあたっている。

 

5号観察(ごごうかんさつ)

 地方更生保護委員会(高知県は四国地方更生保護委員会)の決定により婦人補導院からの仮退院を許された者に対する保護観察(売春防止法第26条第1項)。

 


さ行

再犯防止推進計画(さいはんぼうしすいしんけいかく)

 「再犯防止推進計画」は刑務所出所者らの再犯を防止するため国と自治体の連携を強化したり、薬物依存者を刑務所に収容せずに社会内で更生させたりする施策の検討を盛り込んだ計画で、平成29年12月15日に閣議決定された。

 これは昨年12月に成立した「再犯の防止等の推進に関する法律」(平成28年法律第104号)により政府に計画の策定を義務付けられたもので、①就労・住居の確保②保健医療・福祉サービス栄養の促進③地方公共団体との連携・・など7項目を重点課題としている。来年度から5年間を計画の実施期間としている。

 この法律の背景には、薬物犯罪の再犯率の高さとともに「刑務所に閉じ込めるだけでは再犯は止められない」との考え方が広まってきたことがある・・と言われている。世界的にも社会内での更生を重視する潮流となっており、実効ある計画を進めるには地方公共団体が策定する「地方再犯防止推進計画」が重要となってくる。

 四国管内では高知県だけが計画策定にむけた窓口が決まっていない状態だ。高知保護観察所・高幡保護区保護司会など地元の保護区が中核となって市町村へのアクションすることが今後の重要ポイントとなるだろう。

 

再犯防止対策(さいはんぼうしたいさく)

 罪を犯した人が再び罪を犯さないように指導・支援する取組みづくりが「再犯防止対策」。罪を犯した人は,いずれ社会に戻ってきます。ただし、刑務所から出所しても仕事や住む場所がないために,再び犯罪に手を染めてしまう人が後を絶ちません。

 特に、仮釈放者及び保護観察付執行猶予者のうち,窃盗と覚せい剤取締法違反の取消・再処分率は,その他の罪名と比べ,一貫して高い。

 平成24年7月20日,犯罪対策閣僚会議において,「再犯防止に向けた総合対策」が決定。策定後10年間の取組における数値目標として,「刑務所出所後2年以内に再び刑務所に入所する者等の割合を今後10年間で20%以上削減する」ことが掲げられている。

 国会も議員立法として、再犯の防止等の推進に関する法律が成立し平成28年(2018)12月14日に施行された。国は再犯防止推進計画の策定が義務付けられ、県・市町村は地方再犯防止推進計画の策定が努力義務とされた。現段階では高知県、四万十町ともに再犯防止推進計画は未制定である。

 

3号観察(さんごうかんさつ)

 地方更生保護委員会(高知県は四国地方更生保護委員会)の決定により仮釈放を許された者に対する保護観察(更生保護法第48条第3号,旧法第33条第1項第3号)。

 

再犯率(さいはんりつ)

 「再犯率」は,犯罪により検挙等された者が,その後の一定期間内に再び犯罪を行うことがどの程度あるのかを見る指標である。

「再犯率」の意味を正確に理解するのに重要なポイントは

<1>「何をもって(刑事手続のどの段階で)再犯とみなすのか」

<2>「どのような集団を対象に調べるのか」

<3>「いつからいつまでの期間を調べるのか」

といった観点の違いがあるため,同じ「再犯率」という言葉が用いられていても,その意味するところや数値は異なってくる。

 「再犯率」の一つの指標として「2年以内再入率」や「5年以内再入率」を用いている。これらは,ある年の刑事施設出所者のうち,出所後の一定期間内に,新たな罪を犯して刑事施設に再入所した者がどの程度いるかを把握するものである。 

 

再犯者率(さいはんしゃりつ)

 「再犯者率」は,検挙等された者の中に,過去にも検挙等された者がどの程度いるのかを見る指標である。

 

社会を明るくする運動(しゃかいをあかるくするうんどう)

 法務省が主唱する、犯罪や非行の防止と罪を犯した人たちの更生について理解を深め,それぞれの立場において力を合わせ,犯罪のない地域社会を築こうとする全国的な運動。「犯罪や非行を防止し,立ち直りを支える地域のチカラ」を全国民に呼びかける啓発運動で、”社明運動”と呼ばれる。

 昭和26年(1951)7月,「銀座フェアー」と「矯正保護キャンペーン」の啓発活動を将来とも継続して一層発展させる必要があるとして,“社会を明るくする運動”と名付け,国民運動として世に広げることになった。

 第60回(平成22年)の運動において,新名称「“社会を明るくする運動”~犯罪や非行を防止し,立ち直りを支える地域のチカラ~」が定められた。運動の趣旨を分かりやすくしたこの新名称。

  シンボルマークは、「幸福(しあわせ)の黄色い羽根」。長崎地区保護司会が考案したもので,黄色い羽根は最近では,“社会を明るくする運動”強調月間中多くの皆様にも着用していただけるようになった。保護司バッチとペア着用がよくみられる。

  詳しくは →社会を明るくする運動 

 

社会貢献活動(しゃかいこうけんかつどう)

 更生保護法が改正され、平成27年(2015)6月から、「社会貢献活動」が特別遵守事項として義務付けられた。

 その背景には一般刑法犯検挙人員に占める再犯者の割合が増加し、平成26年においては、47.1%を占めるなど、再犯防止は政府全体の喫緊の課題となっていた。

 社会貢献活動を行うねらいは

  • 「社会の役に立つ体験」
  • 「人の役に立てるという感情」
  • 「社会のルールを守る意識を育む」

 この三点が社会貢献活動を効果的に行うキーワードとなっている。 

 

自立準備ホーム(じりつじゅんびほーむ)

 刑務所や少年院を出所(院)した後、帰る家のない人が自立できるまでの間、一時的に住むことのできる民間の施設で、更生保護施設(高知では高坂寮)と自立準備ホームがある。法務省の統計では満期釈放者の半数近くが帰住先がなく経済的にも不安がある中で出所していた。このことが再犯につながっていることから問題の抜本的解決策として更生保護施設を補完するかたちで自立準備ホーム制度を設けた。

 自立準備ホームは、成23年(2011)年5月「緊急的住居確保・自立支援対策」によりスタートした制度。十分なお金がない場合には宿泊費は国が負担してくれ、食費は収入の状況に応じて負担する(無料も)ことになっている。生活できる期間はおおむね2,3カ月。

 保護観察所に登録されたNPO法人や社会福祉法人等が管理する宿泊施設がそれぞれの特徴を生かして対象者の自立を促している。 

 高知県内では、高知ダルクなど8施設が登録されている。

 

生活環境調整(せいかつかんきょうちょうせい)

 少年院や刑務所に収容されている人が、釈放後にスムーズに社会復帰を果たせるよう、釈放後の帰住先の調査・引受人との話合い・就職の確保などを行い必要な受入態勢を整えるもので、仮釈放等の審理の資料等にするとともに円滑な社会復帰を目指すものとなっている。

 保護司の3つの役割である①保護観察②生活環境の調整③犯罪予防活動のひとつ。

 

SST(ソーシャル・スキルズ・トレーニング/Social Skills Training

 SSTは対人行動能力を伸ばすよう支援する方法の一つ。

 この「社会生活技能訓練」とは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の医学部精神科教授のロバート・リバーマンが考案した心理社会的療法で、適応は当初、精神疾患であったが、矯正施設や児童施設などでも用いられるようになった。

 

 保護司の場合、対象者が就職の面接を受けたいというときに、いつ電話したらいいか、どう面接のお願いをしたらいいかなど、状況に応じて、どういう行動が適切かを一緒に考え、練習するなどして、応用できる考え方や行動の仕方を教えていく方法でである。

 

 全国保護司連盟では、SSTが対象者との面接のほか新任の保護司から面接の方法などを相談されたときなどにも応用できることから、保護司の保護観察等の処遇能力の向上を図ることを目的として研修を開催している。

 保護司を対象に、10時間の研修を実施し、修了者にはSST普及協会認定講師の初級研修修了証書を発行している。 

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保護司処遇におけるSST研修の様子.pdf
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た行

高坂寮(たかさかりょう)

 更生保護法人「高坂寮」は、犯罪をした者や非行のある少年を一定の期間保護し、自立更生を支援する施設を運営する、法務大臣の許可を受けて設立された更生保護法人。

 高坂寮は明治32年(1899)に設立された「県出獄人保護会」が前身で、昭和45年(1970)、現在地に鉄筋2階建てで建設。老朽化のため、全面改築に着工し平成29年(2017)4月新施設(4階建/延床面積747㎡)が完成。定員は男子18名(成人15名、少年3名)

 所在地は、高知市北本町1丁目。連絡先 (088)872−2053

 

特別調整(とくべつちょうせい)

 矯正施設収容者のうち適当な帰住先がない高齢者又は障害者を対象とした、生活環境の調整における特別の手続であり、出所(院)後に福祉サービス等を受けることができるよう調整することによって、円滑な社会復帰を図ることを目的とする。

 法務省は、厚生労働省と連携して、平成 21 年4月から、釈放後速やかに適切な介護、医療等の福祉サービスを受けることができるようにするため、この「特別調整」を実施している。


な行

2号観察(にごうかんさつ)

 地方更生保護委員会(高知県は四国地方更生保護委員会)の決定により少年院からの仮退院を許された者に対する保護観察(更生保護法第48条第2号,旧法第33条第1項第2号)。


は行

BBS(びーびーえす)

 BBS(Big Brothers and Sisters Movementの略)は、様々な問題を抱える少年と、兄や姉のような身近な存在として接しながら、少年が自分自身で問題を解決したり、健全に成長していくのを支援するとともに、犯罪や非行のない地域社会の実現を目指す青年ボランティア団体で、全国で約4,500人の会員が参加してる。

法務省hp

 その名は、今から約100年前にアメリカで始まった、Big Brothers MovementやBig Sisters Movementにちなんで名付けられた。

市区町村などの行政区域や大学などを単位に、全国に約500会がある地域に根ざした様々な活動を展開する基本的な組織。

 高知県BBS連盟は高知保護観察所内にあり、現在高知県下で約70名の会員が活動している。

日本BBS連盟hp

高知県BBS連盟hp 

 昭和25年(1950)には全国BBS代表者会議が開催され全国BBS協議会が発足。これが現在の日本BBS連盟の前身である。各地域に会員による地区会を置き、都道府県単位で連盟を構成し、地方管区ごとの連盟、全国組織とつながる現在の組織体制もこの頃に確立した。

 市民運動という側面よりも、保護司制度や刑事政策への民間協力という文脈のほうが強く意識されていた側面もあが、BBS運動が掲げる「少年たちと同じ目線で、ともだちとして付き合う」というテーゼは生きている。

 平成10年(1998)のBBS運動50周年を記念して「21世紀委員会」が設置され、最近のインターネットの普及などをばねにどのようにBBS運動を新しいメディアに載せていくかといったことが検討されている。旧来の組織的な枠を取り払う可能性を持つ動きであり、すでに全国各地の会員、地区会や道県連盟がインターネットを通じて横の情報交換をおこないはじめている。 

 また、いじめや不登校といった、これまでBBS運動としては主たる活動対象とは見られてこなかった部分への進出もはじまっている。

BBS運動 

 四万十町では、青年団組織を中心に活動を行っていたが、現在では青年団組織の衰退とともにその活動は休止している。 

 

費用弁償(ひようべんしょう) 

 職務遂行に伴い発生する旅費並びにそれに派生する諸経費を「費用弁償」という。

 保護司法第11条の規定により、保護司には給与は支給しないものの「法務省令の定めるところにより、予算の範囲内において、その職務を行うために要する費用の全部又は一部の支給を受けることができる。」とある。特別職の国家公務員である保護司には給与の支給はないものの、職務遂行に係る実費は支払いますという規定。

 具体的な額は、保護司実費弁償金支給規則(昭和29年法務省令第47号)により第2条から第5条まで規定されている。その内容は、

補導費:保護司が保護観察を担当した場合

担当事件1件=7,520円以内/月

生活環境調整費:保護司が生活環境調整又は保護観察に関する調査実施

3,370円以内/1件

※保護司の居住地から対象者までの距離片道8km以上の場合は別途旅行実費を支給

特殊事務処理費:保護観察所長から裁判所等との連絡その他特殊の事務を処理しら場合

6,600円以内/1日

※この規定の解釈として「企画調整保護司(サポセン当直者)」=4,900円/1日

その他の費用:保護司が前三条以外の職務を行う場合、保護観察所長の命じた場合は

社会貢献活動費=4,900円/1件 など各種

 これら旅行実費の算出は、国家公務員等の旅費に関する法律の規定により計算される。

 保護司の職務遂行に伴い発生する旅費等の算定は対象者と保護司の居住地とがケースごとに相違し、算定にあたっての費用額の証明が煩雑となり合理性を確保するうえでいわゆる「まるめ」の経費を費用弁償額としたものと思われる。ただし、生活環境調整費については、保護観察所が対象者が所在する所及び担当保護司を指定するため定額(3,370円以内/1件)のほかに、片道8km以上の場合には別途支給することになっている。

 課題となるのは、更生保護サポートセンターに当直する企画調整保護司の費用弁償である。制度発足当時は、特殊事務処理費の解釈運用として行われてきた経緯があるが、ここ10年で全国に設置されることになり一般化されたといえる。

 また、当高幡保護区においては、実際に50km以上の移動を伴う企画調整保護司と徒歩3分の企画調整保護司がおり、その当直にあたっての費用弁償が同額であることは、法解釈の合理性を欠くものといえる。

 この際、企画調整保護費の条を追加し、生活環境調整費と同じように「距離片道8km以上の場合は別途旅行実費」を支給することが、保護司法に要請する法意だと思える。 

 

不良措置(ふりょうこうそち) 

 更生保護法では保護観察対象者が一般遵守事項と特別遵守事項を遵守することを規定している。また刑法26条の2では執行猶予付き自由刑を受けた保護観察対象者が遵守事項を遵守せず、情状が重い時は執行猶予が取り消されることがある。

 この遵守事項に違反したときは、処遇の転換を図るとともに、再犯非行を未然に防止し、社会を犯罪から防衛するため、不良措置が検討される。

 不良措置は、保護観察対象者の種類によって区分される。

 1号観察者(家庭裁判所決定の保護処分)には「警告」「施設送致申請」「通告」、

 2号観察(少年院を仮退院)には「戻し収容」、

 3号観察(刑務所等刑事施設を仮釈放)には「保護観察の停止」「仮釈放の取消し」、

 4号観察(保護観察付きの刑執行猶予者)には「執行猶予の取消し」がある。

 

保護観察(ほごかんさつ)

 更生保護の中心となる活動で、犯罪や非行をした人に対して、定期的な面接を行い、更生を図るための約束ごと(遵守事項)を守るよう指導するとともに、生活上の助言や就労の援助などを行い、その立ち直りを助けるもの。

 保護観察は、犯罪をした人又は非行のある少年が、実社会の中でその健全な一員として更生するように、国の責任において指導監督及び補導援護を行うもので、保護観察処分少年、少年院仮退院者、仮釈放者、保護観察付執行猶予者及び婦人補導院仮退院者の計5種の人がその対象となる。

1号観察:保護観察処分少年(約41,000人)

非行により家庭裁判所から保護観察の処分を受けた少年

2号観察:少年院仮退院者(約8,000人)

非行により家庭裁判所から少年院送致の処分を受け、その少年院から仮退院となった少年

3号観察:仮釈放者(約21,000人)

懲役又は禁錮の刑に処せられ、仮釈放を許された者

4号観察:保護観察付執行猶予者(約15,000人)

刑の執行猶予とあわせて保護観察付の言渡しを受けた者

5号観察:婦人補導院仮退院者(皆無)

売春防止法により補導処分に付された者を収容で仮退院を許された者

 また、保護観察には一般保護観察、一般短期保護観察、交通保護観察、交通短期保護観察という種類がある。 

 保護観察は、全国1,000人の保護観察官と48,000人の保護司が協働して対象者にあたり、両者が協力することで、保護観察官のもつ専門性と保護司のもつ地域性・民間性を組み合わせて、保護観察の実効性を高めている。

▼保護観察官の役割(例)

・ 保護観察の実施計画の策定

・ 対象者の遵守事項違反、再犯その他危機場面での措置

・ 担当保護司に対する助言や方針の協議

・ 専門的処遇プログラムの実施  等

▼保護司の役割(例)

・ 保護観察の実施計画の策定 ・ 対象者との日常的な面接による助言、指導

・ 対象者の家族からの相談に対する助言

・ 地域の活動や就労先等に関する情報提供や同行  等

 ただし、保護司の発足経緯であるボランティア性を踏まえつつも、保護司の受け持ち対象者の粗密(都市部は多数を抱えるも保護司定員が不充足、農村部では人口減少とともに対象者を受け持つ経験が皆無など、保護区別定数のアンバランス)、薬物再犯者への専門的な対応など保護観察官・保護司ともに量的・質的な能力が求められるようになり、保護観察制度の見直しも必要となっている。 

 

保護司(ほごし)

  保護司法(1~5条、7~9条、11~18条)に基づき、法務大臣から委嘱を受けた非常勤の一般職国家公務員(人事院指令14-3で指定された非常勤国家公務員、無給。実質的に民間のボランティア)で、犯罪や非行に陥った人の更生を任務とする。

 

 保護司の任期は2年であるが、再任は妨げない。ただし76歳以上は再任されない。

 

 保護司は、住居地を管轄する保護観察所(全国50箇所に在る)に配属され、法務大臣が定める区域(以下「保護区」という。)に置かれる。保護区ごとの保護司の定数は、法務大臣がその土地の人口、経済、犯罪の状況その他の事情を考慮して定めることになっている。全国の保護司の定数は52,500人。四国地方更生保護委員会の定数は2,500人。うち高知保護観察所の所管となる県内の保護司の定数は600人で、15の保護区に分かれている。私たち「高幡保護区」の人員は27人で100%の充足である。

 平成28年版「犯罪白書」の統計では、全国の保護司の人員は47、939人で、うち男35,439人、女12,500人。平均年齢64.9歳となっている。充足率は91.3%で、都市部での保護司確保が特に困難となっている。

 

 「高幡保護区保護司会」などの保護司組織は、制定当初の保護司法には規定がなく、その位置付けが明確でなかった。平成11年(1999)4月施行の保護司法の一部改正により、保護区に対応する保護司会と都道府県に対応する保護司会連合会を法定組織とし、その任務を法律で規定してその位置付けを明確にし、保護司組織の活動の一層の充実・活性化を期することとなった。

 

保護司候補者検討協議会(ほごしこうほしゃけんとうきょうぎかい)

 保護区の区域と保護司の定数は定められる法令(保護区及び保護区ごとの保護司の定数に関する規則)で規定され、「高幡保護区」は四万十町の区域で、窪川分区と幡多分区と分区が設置され、27人の定数となっている。充足率100%であるが、保護司の充足率は、近年低下傾向にある。

 ことから、これまでの現職保護司の推薦方式に加え①より幅広い分野から保護司候補者を発掘すること②保護司の選考過程の透明性を確保するため、平成20年度から全国の保護区(分区若しくは旧町村単位)に「保護司候補者検討協議会」を設置するようになった。

 

 この保護司候補者検討協議会は、その地域住民の代表者等が集まり、地域の事情に精通した様々な分野の人々の協力を得て保護司候補者の発掘に努めている。この会議は、概ね2回程度開催され、保護司候補者を人選し、本人の内諾を基に高知保護観察所の附属機関である「保護司選考会」に候補者結果(内々申)を通報している。

 


ま行

メラビアンの法則(めらびあんのほうそく)

 保護司が対象者と面接する場合の重要なポイントは、

「言葉そのものや話し方と表情が矛盾しないこと」。

 例えば、悲しい現実に向き合うことを伝える場合はあえて、声のトーンを落とし、切迫感のある声で、悲しい表情を浮かべることで伝わりやすくなる。その改善策を優しく前向きな言葉で明るく伝えれば、その言葉が受け入れられやすくなります。

 

 このように、人の行動が他人にどのように影響を及ぼすかを判断する実験をアメリカの心理学者アルバート・メラビアンが行ったことから『メラビアンの法則』と呼ばれています。

 この法則は、好意・反感などの態度や感情のコミュニケーションについてを扱う実験から生まれたものです。

 感情や態度について矛盾したメッセージが発せられたときの人の受けとめ方について、人の行動が他人にどのように影響を及ぼすか。その話の内容などの言語情報が7%、口調や話の早さなどの聴覚情報が38%、見た目などの視覚情報が55%の割合であったというものです。

 

 この「言語情報7%、聴覚情報が38%、視覚情報が55%」という数字だけがひとり歩きしてしまった結果、「言語情報や聴覚情報よりも、なによりも視覚情報が大事!」「見た目が一番重要」という本来の前提条件を抜きにした間違った解釈が生まれてしまいました。

 「人は見た目が9割」という本が出版されるように非言語情報が重要であることには間違いはありません。

 いくら言葉でもっともらしく述べていても身だしなみや顔の表情をあわせもたないと相手には伝わりません。口下手でも愛情を込めた態度や誠意は人の心を動かします。

 保護司が対象者と面接する場合、前準備(相手の理解・面接手法の確認・面接場所の環境整備)が大切です。その積み重ねは、自然と余裕を持った振る舞いで相手に接触でき、結果として、面接の成功へとつながることでしょう。

 


や行

4号観察(よんごうかんさつ)

 裁判所の判決により刑の執行を猶予され,保護観察に付された者に対する保

護観察(更生保護法第48条第4号)。

 


ら行

良好措置(りょうこうそち)

 更生保護法では保護観察対象者が一般遵守事項と特別遵守事項を遵守することを規定している。また刑法26条の2では執行猶予付き自由刑を受けた保護観察対象者が遵守事項を遵守せず、情状が重い時は執行猶予が取り消されることがある。

 この遵守事項を守り、保護観察の効果が上がり保護観察対象者の改善更生が図られた結果、保護観察による指導監督及び補導援助を継続する必要がなくなったと認められる場合には良好措置が検討される。

 良好措置は保護観察対象者の種類により区分される。

 1号観察(家庭裁判所で決定する保護処分)の場合、期間満了の前に処分を終了する「解除」という措置(保護観察所長が決定)がある。現在の処遇段階「C段階」が「3か月以上継続」していることが前提となる。必要な経過期間は保護観察の種別により異なるが、例えば1号観察(一般)の場合、おおむね1年経過後に良好措置が検討される。また「一時解除」の良好措置もある。

 2号観察(少年院を仮退院)の場合は「退院」がある。おおむね6か月経過後に良好措置が検討される。

 3号観察(刑務所等の刑事施設を仮釈放)の場合には、良好措置はない。

 4号観察(保護観察付きの刑執行猶予者)の場合は「仮解除」がある。おおむね1年経過後に良好措置が検討される。

 この1号保護にたいする良好措置を決定する保護観察所長は、「保護観察経過報告書」を最も重要な判断材料とすることから、担当保護司が毎月提出するこの報告書への記載内容は重要な意味を持つことになる。特に「保護観察の経過」は簡潔かつ明瞭に具体の状況を観察し示さなければならない。また、担当保護司は対象者の改善結果を評価し主任官に「解除」の意見を述べることができる。